なぜ、ベルギーでマッサージ屋さんをやっていたの?2 【ベルギーのマッサージ事情】
ウェブサイトで私のプロフィールを見てくださったお客様からよく質問されます。
その都度、かいつまんで成り行きをお話しするのですが、記憶が薄れる前に、自分語りをしてしまおうと思いはじめました。個人的なことなので、全ての方に興味があるものでも、ためになる話でもありませんが、よろしければお読みください。
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キネジテラピー
ベルギーで罹患した乳がんの手術、放射線治療もつつがなくこなし、すぐに健康とは言えないまでも、普通の生活に戻っていきました。病院では、術後すぐにキネジテラピー(日本の理学療法士的な)の先生にリハビリの体操を教わったり、傷口が硬くならないようなマッサージを受けるようにキネジテラピーに通う処方箋が出されたりしました。
この、キネジテラピー【(フランス語)kinesithérapie】通称「キネ」が、日本で言う理学療法、運動療法で、けがのリハビリ、術後のリハビリもさることながら、肩こり、腰痛、時には子供の喘息などでも医師の処方があれば、何割かの保険対応で治療を受けることができます。
キネジスト(キネジテラピーをする人)は、病院にもいますが、個人で開業しているや、各専門分野が集まってクリニック的なセンターで運営している場合もあります。医師の処方で勧められることが多いですが、気になるところがあれば、直接アポイントを取ってセッションを受けることもできます。
日本の整形外科や接骨院のような電気や超音波などの機械は少なく、メインは、手技なので、相性や個人の技術もそれぞれで、自分に合ったキネジストに出会ように、知り合い同士の情報交換も大切です。 その他、骨のゆがみを直すオステオパシー【ostéopathie】もポピュラーです。カイロプラティックのように、ポキポキ系、ユラユラ系など、手技で骨(osteo)を矯正して、身体の不具合を解決していく治療で、治療代金も一部は医療保険適応となります。
キネジテラピーのマッサージやストレッチは日本人にとっては基本的に「ゆるい」ですし、西洋医学が元なので、不具合の出ている部分しか治療の対象になりません。東洋医学のように反射区という、不具合部分からは想像もできないような、あちこちのツボを治療するとか、身体全体のつながりを見て治療してくれるキネジストはなかなかいません。
ラノワ先生のキネジテラピー
私も、術後のマッサージや、腰痛、首の違和感などなどの不調に伴い、キネジテラピーを利用しました。一番長くお世話になったのは、ラノワ先生という年配の女性キネジストで、以前住んでいたアパートのはす向かいのご自宅兼治療室で営んでおられました。
*治療室がある建物前には、写真のような金属のプレートが立っています。景観を重視した街づくりなので、日本のような無造作な看板はありません。
ラノワ先生のマッサージやストレッチも優しい系で、イタ気持ちいいセッションを期待していると物足りないのですが、私がそこへ通っていた理由は先生のお人柄でした。患者さんに向き合う真摯な姿勢と優しいお人柄で、思わず自分の人生を語りたくなるような時間を過ごすことができました。体調の不具合は、生活環境に左右されることがほとんどです。だからと言って、生活環境を変えることは一番難しいのですが、ラノワ先生の優しい治療を受けながら話しているだけで「気持ち」から楽になっていく気がしていました。お互いの相性もあったとは思いますが、こんなセラピストになりたい、と思える方で、私がリラクゼーションでお客様に対応する上で、ラノワ先生との出会いは、とても貴重な体験だったと思います。
リラクゼーション系マッサージ 諸々
ベルギー(ヨーロッパ)の非医療系(リラクゼーション系)のマッサージとしては、オイルマッサージが主流です。エステサロンや大型化粧品店のエステ部門などで主に行われています。裸になって、全身オイルで撫でられる。これも、割と優しいマッサージが多いです。
最近のグローバル化に伴い、世界各国のものが入って来て、選択肢も増えたように思います。
少し前は、薄暗い所で営む中国の「マッサージ店」という名の風俗サービス業が多かったためか、アジアのマッサージというと、そちら系のものと思われておりました。
当初は、日本の指圧系マッサージと言うと、アジアの風俗マッサージと思い込んで予約の電話をしてこられる方もいました。また、問い合わせの際にご自分から「エロティックなサービスはありますか」と聞いてくださる方も! その方がはっきりお断りできて簡単でしたが (笑)。
その頃から10年たった今では、shiatsu という商品名のマッサージチェアが家電量販店で販売されるほどになり、圧したり、揉んだり、叩いたりして、身体を整えるセラピーだという認識も広まりつつあります。
心身のメンテナンス、東西の違い
病気になれば、医者に行って薬を飲むのが西洋の習慣ですが、病気ではないけれど、なんとなくの不調を改善して毎日を快適に過ごしたいと思うのは、洋の東西を問わず変わらないものですね。むしろ、心身のメンテナンスという概念では、西洋の方が貪欲なのかもしれません。
私のサロンに「定期的」に来てくださっていたのは、ベルギー、フランスをはじめヨーロッパ国籍の方が多く、2週間や3週間毎とか、毎月最初の何曜日とか、生活サイクルに組み込んでおられました。かたや、多くの日本人のお客様は、「肩が凝って大変だ!」「首がカチコチで頭が痛い!」と、大変な状態になってからお越しになることが多かったですね。その場合はもちろん、「よし!お役に立とう」と、やる気になり、「楽になった」と喜んでいただけるのは嬉しい限りですが、もう少し早く来てくだされば、と思うこともしばしばでした。
身体の不調の改善もさることながら、定期的に自分のための時間を作り、「気持ちいい」セッションを受けて身体も心もメンテナンスしてリセットする、それこそがお金だけではない、余裕のある生活ではないでしょうか。
忙しい日本社会にフィットしたのであろう、「24時間営業」の「ちょこっとメンテナンス」の広がりを見て、東西のメンテナンス観の違いを考えさせられる昨今です。